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英語で学ぼう!◆鬱陶しい〈機械〉

ベンツです。いやはや・・・東京には大雪が降る、世界には外出自粛の波がおしよる、と、なにやら世紀末のような日々がやってきましたが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

ところでみなさん、eN新書第2弾『ディストピア小説への招待状』はお読みなられたでしょうか。まだ読んでない?うーむ、それでは本書のなかの物語のラストにはふれないようにして、と。

今回は、この本の中で読むことができるE.M.フォースターの短編小説「機械が停まる」を現代のわたしたちの世界と比較しているサイトをふたつご紹介しましょう。

ひとつ目は2013年創刊のアメリカ・ニューヨークの科学雑誌『ノーチラス( “Nautilus” )』からです。科学者だけでなく文学者、芸術家、宗教家などさまざなま分野の専門家がタッグを組んで創り上げているユニークな雑誌。最新号にはこんな記事が掲載されました。

Only Disconnect! A Pandemic Reading of E.M. Forster

The astonishing relevance of the British writer’s story, “The Machine Stops.”

BY SIDNEY PERKOWITZ MARCH 26, 2020 (Nautilus  *記事掲載のウェブサイトに飛びます )

シドニー・パーコウィッツ

著者のシドニー・パーコウィッツは米国・エモリー大学の物理学名誉教授。物理学はもちろん、科学全般から映画まで幅広い著作物で知られています。

パーコウィッツ博士によれば、現在わたしたちが置かれている状況、各自が自宅に閉じこもりコロナウィルス(COVID19)の世界規模(パンデミック)感染を防いでいるこの姿こそ、フォースターが100年前に書いた「機械が停まる」と同様の生活であることを指摘しています。

インターネットで映画をみたり、ゲームをしたり、デリバリーを活用したり・・・ひょっとして、コロナウィルスがなくても、わたしたちの生活はこんな感じ??

ふたつ目は1925年創刊という古い歴史を持つアメリカの『ザ・ニューヨーカー(”The New Yorker”)』誌から。こちらの筆者はイギリス人神経学者でコロンビア大学の教授だったオリバー・サックス(Oliver Sacks, 1933-2015)によるエッセイです。著書『レナードの朝』や『妻を帽子とまちがえた男』などでご存じの方も多いかも。

オリバー・サックス

The Machine Stops

The neurologist on steam engines, smartphones, and fearing the future.

By Oliver Sacks February 4, 2019 (The New Yorker *記事掲載のウェブサイトに飛びます)

サックス教授は、世の中に新しいものが増えていく一方で、古いものが消えていくことに馴染めていない自分に気が付きます。

大都市ニューヨークでは、小さな機械――スマートフォンを片手に握りしめ、まわりの様子にはまったく無関心の人たちが行き交う姿に憂います。

「21世紀のコミュニケーション」と題したパネルディスカッションでは、ネット開発者が自分の娘の長時間にわたるネット生活を自慢げに語れば、教授は「彼女はジェーン・オースティンや、ほかの作家の小説を読んだことがあるのか?」と反論します。膨大な情報を蓄積するのと、人間性や人間社会をしっかりと理解するのとではまったく違う!

会場の半分は大喝采、会場の半分は大ブーイング・・・

そしてふたりの教授はE.M.フォースターの短編小説「機械が停まる」を例にあげて、〈機械〉が世界を支配している生活がいかに現代のわたしたちの生活と酷似しているのか解説します。

とくに、息子クーノーが遠くはなれた部屋で暮らす母親ヴァシティに言うセリフ:

“I want to see you not through the Machine. . . . I want to speak to you not through the wearisome Machine.”


 「〈機械〉を通さないで会いたいんだ…鬱陶しい〈機械〉なんか通さずに話したいんだ」

wearisomeはcausing a person to be tired and/or bored(<人を>疲れさせたり、飽き飽きさせたりするもの)という意味。ふたりの教授が引用している部分ですが、高橋教授は「鬱陶(うっとう)しい」と訳されてますな。

この 「鬱陶(うっとう)しい 〈機械〉 」 はやがてヴァシティたちの快適であったはずの生活を保つことができなくなってきます。

テクノロジーに頼り過ぎた結果、人間は考えることをやめてしまう、この恐ろしい事実をフォースターは母子の対立から見せていくんですね。

画面で見えているのはピクセルだけであって、相手の本物の表情でも姿でもない、ということ。いま、コロナウィルスによって行動を制限されて初めて実感し始めた、人と人とのつながりについて考えてみるいい機会かも。このふたつの記事は「機械が停まる」といっしょにぜひ読んでみてください!

英語の勉強にもってこい…そうそう、みなさんにはこちらをプレゼントです。「機械が停まる」の英語原文をPDFにしました。こうなったらとことん英語漬けですぞ!ダウンロードは下のタイトルをクリックしてください。

「機械が停まる」(英語原文PDF)

時間はたっぷりあります。


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