さあ、始まりました。「おとなも自宅学習」第一弾「『われ思う』ことを書いてみよう」にご参加いただける方、この場をお借りしてありがとうございます!
前回は、400字で自分の考えを伝えるための「投書」の書き方についてお話しましたが、今回からは実際にみなさんの「投書」を掲載していきましょう。さあ、どんな意見が飛び出すかな?
エントリーナンバー1 松本隊長
フィールドを想う
研究は、蟲毒に似ている。呪術師が百の蟲を共食いさせるように、研究者は自論を百の批判に晒し、そこに神霊が宿るのを待つ。
私は野生チンパンジーの研究者、あるいはフィールドワーカーである。私は大学院生活の多くをアフリカの森で過ごした。チンパンジーとともに歩き、休み、食べ、眠る。チンパンジーが生きる世界に自分自身も身を置きながら、眼前の現象と奔放な着想を、自論へと昇華させる日々を2年近く過ごしてきた。
いま、新型コロナウィルスが全世界で猛威を振るう中、フィールドワーカーを志す20代の大学院生たちは、共食いさせる蟲も持たぬままに、ステイジャパンを余儀なくされている。
経済をどう復興させるか、ワクチンの開発にどれだけの研究費を割くか、といった議論に水を差す気は更々ない。ただ、野生動物にウィルスを移す役を演じないよう、フィールドに赴くことを自ら禁じている大学院生たちの、やり場のない熱と、渇望を、あなたは想像できるだろうか。私は、フィールドワーカーの生み出す毒が、人類の妙薬になることを頑迷にも信じている者である。(452字)
松本隊長は野生動物の研究にかかせないフィールドワークの重要性を唱えつつ、研究者となる学生たちにとって、コロナ禍のいまは非常に厳しい状況だということを訴えています。
さて、のっけから難しい漢字がでてきました。「蟲毒(蠱毒、こどく)」とはその昔、中国の呪術師が使う、ひとつの器にいろいろな蟲(虫)を入れて共食いをさせる過程で作られる毒のことをいいました。このように、「あれ?なんて読むんだろう?」とちょっとした工夫で読者も興味をひかれること請け合いです。
松本隊長、未来の研究者への応援歌「われ思う」をありがとうございました!
倉持三郎 2020年7月20日 — 投稿者
松本先生のエッセイを読ませていただきました。
自由奔放なまでに仮説を立てるいうことに、研究とはそういうものかと、感心いたしました。