etwas Neues

Find something new!

翻訳日本文学翻訳国際フォーラム2018◆翻訳ってなんだ?!

こんにちは、ベンツです。

本日は、JLPP(Japanese Literature Publishing Progect)主催の翻訳国際フォーラムに行ってまいりました。

JLPPは高橋教授が審査委員長の翻訳コンクールの主催者でもありますな。
ちょっとキツキツの席で大変…

今回は、そのコンクールの受賞者で、翻訳家として活躍している方たちと、イギリス、フランス、アメリカの出版社から翻訳文芸作品を手掛けている編集者の方たちをお迎えしてのシンポジウムです。

デボラ・スミス(Deborah Smith)さんは、韓国人作家ハン・カン(Han Kang)さんの『ベジタリアン“The Vegetarian” 』の翻訳で2016年のマン・ブッカー・インターナショナル賞(The Man Booker International Prize)を受賞した翻訳者です。現在は、中東から日本までアジア全域にわたる翻訳作品を出版するイギリスの非営利出版社を経営し、そのうち75%が女性作家の作品だそうです。

ユカ・イガラシ(Yuka Igarashi)さんは、アメリカの独立系の出版社で、作家やミュージシャンの新しいラディカルな考えを広める、コミュニティーとしての出版社で編集長をしています。

「翻訳には非常に人と時間とお金がかかります。たとえば、今出版しようとしている本は、とりかかってから6年経っています。みなさんには、世界のどこの出版社でどんな日本語の本が出版されているのか知ってほしい。それぞれの出版社でそれぞれの視点があるのです」(イガラシさん)

「韓国では、文芸に対する予算が非常に豊かです。日本もぜひ、できることなら翻訳にもっと目を向けてほしい。個人的には沖縄の女性作家、政治的なものがはっきりしている作品、また、方言ものを翻訳してみたいです」(スミスさん)

スーザン・ハリス(Susan Harris)さんは、世界各国の現代小説、詩、マンガを抜粋翻訳して無料で紹介するオンライン文芸誌の編集ディレクターです。

マニュエル・トリコト(Manuel Tricoteaux)さんは、フランスの文芸出版社の副編集長。外国文学の翻訳出版に長年取り組んできました。

「毎月3つのテーマから様々な国の作品を英語に部分翻訳して紹介します。3つとは、地理的なくくり、トピックでのくくり、言語でのくくりから成ります。日本は地理的なものとして、次はトピックで、日常的なもの・ファンタジーもので、と、テーマに沿って様々な作家の作品が英語を通じて他の国の人たちの目に触れるところが面白いところです」(ハリスさん)

「翻訳作品は翻訳者やエージェントから持ち込まれたものが多いのですが、選ぶときは、作家自身に注目して、その作家がどのように成長するかを基準に決めます。新しい作品を発掘するのも大切なのですが、どうしても一作家との長期間の取り組みが要求されるので、双方のバランスをとることが重要だと思います。」(トリコトさん)

編集者のみなさんの、日本の翻訳作品に対する熱いコメントで盛り上がったあとは、作家でミュージシャンの町田康さんの講演とフランス人翻訳家のオノレさんとの対談です。

自身の作品が映画や演劇にもなる町田さんは、作品の映画化はある種の翻訳だ、と言います。

「自分の体験を人に話すとき、だれでも自分の言葉に置き換えて話します。でも、それはすべてを話すわけじゃない。現実のことからいろいろなことが抜け落ちている内容です。小説も同じで、定型化しては売り物にならない。内容を省いたり、盛ったりするバランスをとるのが上手な小説家なんじゃないかな」

「さて、それを映画化するとき、単におもろい小説だからコメディー映画にする、でいいのか。作者の意図が明確な方が確かに映像にしやすいけれど、それがよいかどうかは別。翻訳も同様で、日常のささいなこと、つまり抜け落ちた部分を拾うのが翻訳の難しいところだし、そこをすくいあげることが映画化でも翻訳でも大切なんじゃないでしょうか」(町田さん)

フランス人翻訳家のパトリック・オノレ(Patrick Honnore)さんは、こぶとりじいさんが出てくる町田作品を例にして、元の民話を知らない人たち向けにはどうすればよいのか、翻訳者ならでのご苦労を語ります。

「古典を現代訳にするのと、海外作品を翻訳するのとでは少し違います。時代物は時間差がそこに生まれますが、翻訳ものは時間の差はなく、そこには文化の壁が存在します。こういうときは、語り手でもなく、作者でもなく、登場人物に寄り添って訳していくのがよいのではないでしょうか。」(オノレさん)

まだまだつづきます…

次へ 投稿

前へ 投稿

© 2024 etwas Neues

テーマの著者 Anders Norén