先日、高橋教授による「シャーロック・ホームズの魅力」についての特別講義がありましたのでご紹介いたしましょう。
新しく創刊された『ストランド』誌にいち早く目をつけたドイルは、この雑誌にホームズの短編を連載することとなります。読者は列車で通勤するホワイトカラーの人たちがターゲット。定価6ペンスという当時のほかの雑誌からみたら非常に安い価格設定。お父さんが家に持ち帰れば、家族みんなもホームズの虜…
カメラ、タイプライター、録音付き蓄音機など、当時の最新式の商品が小説のなかでアイテムとして登場します。さらに『ストランド』誌の広告には、読者の心をくすぐる「科学的(scientific)」な商品として掲載されている、という二重の戦略。
もちろん、ホームズも科学探偵(Scientific Detective)。謎の解明より科学実験の解明のほうに興味がある、と当時の名探偵たちとはかなり毛色の変わったところもホームズ人気の一因でした。
科学探偵ホームズのクールなキャラクターだけでなく、誰もが少なからず持っている好奇心で、他人の正体を探って明らかにする行為、つまり探偵といっしょにdetectを楽しむことができる作品に仕立て上げた作家ドイルの腕の良さによるものかもしれませんね。