こんにちは。スコットです。
今回は、倉持三郎先生の新刊『20-21世紀英連邦小説―英連邦諸国の今を読み解く』で紹介された二人の作家について、朝日新聞の記事を読んでみましょう。
まず、ひとりは旧英植民地のトリニダード出身のV.S.ナイポールです。
「アイ・イズ~」(私は~です)。学校の試験でこう書けば間違いなく誤答だろう。一人称なら「アム」が来る。だがノーベル賞作家V.S.ナイポールはこうした植民地英語を自在に駆使した。インド系移民3世として、当時英領だったカリブ海の島国トリニダード・トバゴに生まれた作家だ。・・・登場人物たちの不器用で温かい語りに引きこまれる。自称世界一の詩人。やけに身なりの立派なごみ収集人。神秘的なマッサージ師……。少年期に島で出会った人びとが創作の源だ。下町の路地裏でだんらんや夫婦喧嘩をのぞき見するような感じがたのしい。日の当たらなかった植民地英語の多彩さを英本国文壇に知らしめた功労者の一人と言われる。(2018年8月16日天声人語より)
ナイポールは残念ながら今月11日に85歳で亡くなりました。
ナイポール氏の作品の多くは植民地時代後のカリブ社会におけるトラウマを扱ったものだ。代表作の一つである半自伝的小説「ビスワス氏の家(A House for Mr Biswas)」では、トリニダード・トバゴに住むインド系移民が自らのルーツを保持しながらカリブ社会に溶け込もうとする努力の困難さを描いた。(2018年8月12日AFPより)
ちなみにこの「ビスワス氏の家」、わたしも読みたい本のひとつなのですが…
「『ビスワス先生の家』はまだ翻訳がないのではないかと思います。原文が500頁もあり、内容は地味ですから出版社はためらっているでしょうね。でもこの作品は彼の作品のうちで最高傑作とわたしは考えています。
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そして、もうひとりは南アフリカ共和国出身のJ.M.クッツェーの新刊『モラルの話(Moral Tales)』の紹介です。ちなみに、クッツェーは英ブッカー賞を2度、2003年にはノーベル文学賞も受賞しています。
クッツェーは、「効率のためにはどんなことも許される」という現代社会を覆う思考法と闘ってきました。
モラルとは単なるお説教ではない。目の前の弱者に、考える暇もなく反応してしまう心の動きだ。このクッツェーの思いに、ぼくは今を越えていく力を感じる。(2018年8月11日朝日新聞 都甲幸治 早稲田大学教授・アメリカ文学)
そんなクッツェーに挑戦したい人はMoral Tales に収録されている短編をひとつ:
「うそ(Lies)」(クリックするとThe New York Review of Booksのサイトに飛びます)
今夜はモラルの時間&英語の時間…