こんにちは。ウィリアムです。わたくし、フォーゲル・キンダーガルテン(フォーゲル幼稚園)の園長をやっております。
今回、幼児向けの「ほめて伸ばせ!」シリーズができたということで、ここでわたしの敬愛するイギリスの思想家ハーバート・スペンサー(Herbert Spencer, 1820-1903)について簡単にご紹介しましょう。
スペンサーは、理想論ではなく、現実に沿った教育論を構築したことで有名な学者です。著書『教育論』(Education : intellectual, moral and physical, 1860)では、人間の生活活動を重要な順から分類しました。
- 自己保存に直接役立つ活動(those activities which directly minister to self-preservation
- 生活に必要なものを確保することによって、自己保存に間接的に役立つ活動(those activities which, by securing the necessaries of life, indirectly minister to self-preservation)
- 子どもの養育やしつけのための活動(those activities which have for their end the rearing and discipline of offspring)
- 適切な社会的・政治的関係維持に携わる活動(those activities which are involved in the maintenance of proper social and political relations)
- 生活の余暇の部分を満たし、趣味や感情を満足させるための活動(those miscellaneous activities which fill up the leisure part of life, devoted to the gratification of the tastes and feelings)
そして、人間が社会においてこの5つの生活活動を遺憾なく発揮するための教育として、以下の5項目を挙げました。
- 直接的自己保存に備える教育(that education which prepares for direct self-preservation)
- 間接的自己保存に備える教育(that which prepares for indirect self-preservation)
- 親であるための教育(that which prepares for parenthood)
- 市民であるための教育(that which prepares for citizenship)
- 生活面での種々雑多なことを改善するための教育(that which prepares for the miscellaneous refinements of life)
ちなみに「自己保存」とは、生物が自己の生命を保存するとともに発展させようとすること。スペンサーは、同時代に生きたダーウィン(Charles Robert Darwin, 1809-1882)の進化論に非常に影響を受けていました。生物と同様に社会も進化し、 個人が社会に適応する度合が高まるにしたがって 個人と社会の利益の一致が進み、やがて悪や不道徳は姿を消していくという「社会進化論」を唱えたのです。
このように、スペンサーは『教育論』のなかで、理想の社会に必要な理想の個人を育てるには「どのような知識がもっとも価値があるのか」と題して、以上のような教育の必要性を述べ、それらを達成するために「知のための教育」「徳のための教育」「体のための教育」がある、と教育を3分して解説しています。
彼の教育概念は20世紀初頭、アメリカや日本に取り入れられ、特に明治時代初期の日本では「知育」「徳育」「体育」ということばが生まれました。現在の文科省が提唱する「生きる力」というのは、このスペンサーの教育理念「自己保存」のための教育を指しているのでしょう。
はっ!長くなりましたが・・・「ほめて伸ばせ!」シリーズでは、幼児期からこの3つの領域「知育」「徳育」「体育」をバランスよく身につけるために必要な家庭教育の手助けになる教材を提供させていただきます!