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お酒ものがたり◆進化する酒

お久しぶりです。暖かくなったり、寒さが戻ったり、で大変だった2月もあとわずか。あともう少しで桜の季節です。さて、きょうはどんなお酒の話をしましょうか。

進化する酒

昨年、私たちの大先輩バーテンダーが旅立たれました。91歳でした。

晩年はコロナでなかなかお会い出来なかったけれども、それまではとてもお元気で、たまには街路を訪ねてくださりマティーニを好まれました。戦後にはシベリアに行ったこと、GHQに接収されたバーで働き始めたこと ―― 大変な時代を駆け抜けた方ですがいつも前向きで、わたしたち後輩に対しても対等で接してくれました。
そんな大先輩がおいしいと飲んでくれたマティーニ。このカクテルのベースの酒はジン。
今日はジンの歴史を辿ってみましょう。

ジンはヨーロッパ発祥の蒸留酒に、さまざまなボタニカルの風味づけがされた(主にジュニパーベリー)
苦みや爽やかさを感じるお酒です。
この主なフレーバーのもととなるジュニパーベリー、古代エジプトでは頭痛薬、アラブ人たちの間で痛み止めとして使われていました。

ジュニパーベリー


13~14世紀にかけてネーデルランド(オランダ)で現在のジンの原形があったようです。
大航海時代には、このジンのようなアルコールは利尿作用や抗炎症作用の効果から、長い航海で南に向かうオランダ船にはかかせない「薬」となりました。
この「薬」はフランス語でジュニエーブル、ネーデルランド地域でジュネヴァと呼ばれ広がりますが、次第に爽やかな飲み口から薬用というよりは新しいお酒として人気を博していきます。

オランダ、ゼーラント州に到着したウィリアム3世(1691年)(from Wikipedia)

1600年代後半、英国名誉革命(1688-89)の英蘭連合艦隊により、イギリスでもこの酒を飲むようになり、略してジンと呼ばれるようになりました。さらには名誉革命の際、オランダからイギリスに渡り国王に即位したウィリアム三世が故郷を想い、このジュネヴァジンをイギリスに広めたとも言われています。

1829年に描かれたジンの店の様子。店の奥に”OLD TOM”の樽が見える(by Wikipedia)

1800年代前半、イギリスでは雑味の有るスピリッツに砂糖やボタニカルを添加して味をごまかした、雄猫マークの「オールド・トム・ジン」が主流でした。
当時ジンには高い税金が課され、ジン蒸留の免許制度も厳しかったため多くの密造酒が作られ雄猫トムの看板が掲げられました。

1900年代に入り、よりクリアなスピリッツを大量生産出来るようになると、フレッシュなボタニカルを生かしたクリーンなジンを、トムジンと区別して「ロンドン・ドライ・ジン」と呼び輸出されるようになります。アメリカに渡ったロンドン・ドライ・ジンはカクテルベースとなり、世界に通じるスピリッツとなりました。

薬から嗜好品に変化したジン ―― 「オランダで生まれ、イギリスで洗練され、アメリカが栄光を与えた」と言われ、つねに進化してきました。
昨今では「クラフトジン」と呼ばれ、生産地の土地に根付いたフレーバーが添加され、より個性豊かになりました。

ジンの飲み方も多種多様。そのまま飲んでも良し、ジントニック、マティーニ、ギムレット。
その時の気分にあわせて、色々な飲み方で楽しんでください。


マティーニを作るたびに思い出す大先輩、いつも美味しいと飲んでくれた大先輩のように、進化を止めず前向きなおばあちゃんバーテンダーになりたと思います。

なりた

寒い中、ほっと一息つきたいとき、ちょっと語らいたいときに、マティーニをお試しください!

街路(GAIRO)

〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1丁目2−5(都営地下鉄三田線・新宿線、東京メトロ半蔵門線【神保町駅】から徒歩3分)

電話:03-3518-9168(営業日・時間はお店に直接お尋ねください)

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