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お酒ものがたり◆じっくり味わいたい酒

こんばんは、なりたです

とても暑い夏となりました。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。昼間は冷たいビールが主役でも夜はウイスキーをゆっくりグラスに注ぎながら、今夜もお酒ものがたりに耳を傾けていただければうれしいです。

じっくり味わいたい酒

英国はスコットランドの西側に位置するアイラ島。佐渡島より小さな島ですが、ここで造られるラガヴーリン16年というスコッチのシングルモルト・ウイスキーをご紹介しましょう。

赤丸部分がアイラ島

年間を通して冷涼な気候のアイラ島は、島の4分の1がピート(Peat=泥炭)層で出来た、ウイスキー産業と観光で成り立っている島です。ちなみにピートとは、沼地で植物が堆積し年月をかけて炭化した泥炭(炭化のあまりすすんでいない石炭)のこと。ウイスキー造りではこのピートを切り出して、大麦を発芽させた麦芽の成長を止めるために乾燥させる際の燃料として、香り付けを兼ねて使用されます。

1700年代、島にはウイスキーの密造所が集まっていました。島の周囲はピート層を含む湿地帯で、海は暗礁が多くこっそりウイスキーを造るには適した場所でした。1816年、ラガヴーリン蒸留所(the Lagavulin distillery)は正式に創業したのちに、1889年ピーター・マッキー(Peter Mackie, 1855–1924)という男があるじとなりました。かれがこの蒸留所も含め、のちに「ホワイトホース」というブレンデット・ウイスキーを作り、会社をスコッチ・ウイスキーのBIG5と呼ばれるまでに育て上げ準男爵を授けられます(ホワイトホースは原酒のひとつにラガヴーリンを使用しています)。

ピーター・マッキー

ピーターはスコットランドの保守派でタータンを着用し、休み知らずで良く働きました。スコットランド人の英国外交官ロックハート卿はかれを「1/3は天才、1/3は誇大妄想狂、1/3は奇人」と評したとか。変わり者であると同時に情熱の塊のような人でもあったのでしょう。

竹鶴 政孝(たけつる まさたか、1894-1979)

1920年に、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝が蒸留を学ぶべくスコットランドに渡りました。秘密主義で警戒心の強いこの地での受け入れ先を探すのにひじょうに苦労したそうですが、当時、ピーターがオーナーだった蒸留所で竹鶴政孝を受け入れています。奇人ピーターがなぜ竹鶴を受け入れたのか・・・いまだ謎です。

ラガヴーリン醸造所(Wikiより)

自然豊かな場所でウイスキーを造るなんてちょっと憧れてしまいますが、実際はそんな素敵な世界ではなく、立ち入りづらく人が住むには過酷な環境だったでしょう。しかしウイスキーにとっては、製造過程で使用するピートの香りや海から吹く厳しい潮風が、その力強い個性と唯一無二の味わいを作り上げる最良の土地でした。

この「ラガヴーリン16年」というウイスキーのラベルにはこのような一文があります。

TAKES OUT THE FIRE but LEAVES IN THE WARMTH(時は炎を消し去るが温もりを残す)

樽で16年間熟成させるのは標準的な12年に比べると長いですが、この文言のようにゆっくりと時間をかける事でしか生まれない情熱の行く先もあるとわたしたちに教えてくれます。そして冬の厳しい環境とか夏の短い楽しみとか、情熱を注いだ男とかわざわざ極東から来た男とか、酸いも甘いもこの16年に凝縮されているように思います。

ついついせわしなくなりがちな毎日ですが、ウイスキーを楽しむ時間を作ってみてはいかがでしょうか。

なりた

アイラ島って野鳥の営巣地になっていてバードウォッチャーに人気があるそうです。

街路(GAIRO)

〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1丁目2−5(都営地下鉄三田線・新宿線、東京メトロ半蔵門線【神保町駅】から徒歩3分)

電話:03-3518-9168(営業日・時間はお店に直接お尋ねください)

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