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今年も大人の宿題がスタート!さて、二人目のバイトさん、こちらへどうぞ。
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さら
ぼくの推薦物語はここで読めます(クリックすると英語原文のサイトにジャンプします)のでぜひトライしてみてください。
お勧めするのは、フィッツジェラルドの(おそらく未和訳)短編The long way out. 彼は『ギャッツビー』で一躍有名作家に登りつめたが、凋落も早かった作家だ。その浮き沈みと私生活を切り売りしながらも筆を折らなかった姿がいつまでも私を捉えて離さない。
本作品でも私生活感を漂わせている。主人公の女性は恐らく、夫人であるゼルダをモデルにしている。夫である人物が自動車事故で亡くなっているが、これは何を暗示しているのだろうかと、作品と彼の私生活を行ったり来たりしながら考えること、30年以上経っている。
事実は小説より奇なりとは言うものの、デビュー後1世紀経っても彼の描いた小説たちは、私には依然として奇のままだ。
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もう1冊お勧めを紹介してもいいですか?
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齢60の声が聞こえてきそうなのに、今だにマンガを読んでしまう。三重県南部の小さな漁業の町が生んだアーティストの描く「ふなだまさん」刀で斬りつけ、血がドバーっというマンガが苦手な私には、宝物にしたい作品だ。
中上健次先生が綴り続けた人物が話す言葉のリズムがぴったりと重なる私には「ふなだまさん」
の作者が描く登場人物の言葉もぴったりと重なる。言葉のリズムが重なると物語が勝手に語り始
める。久しぶりにワクワクしながらページを捲ることができた。
巻末には7話収録の1巻で終わり、と書かれているが、1があるなら、2もというのは読者の欲だろうか。
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フクロウ書店主 2021年8月13日 — 投稿者
‘The Long Way Out’
さら店員、幸せについてつい考えてしまう本のご紹介ありがとうございました。
医師や看護師たちから見たら不幸な一日も、ミセス・キングにとっては幸せな一日 ―― 作者の背景を知らずに読むと、オリヴァー・サックスの「妻を麦わら帽子にまちがえた男」を思いだしました。先天的な原因から病気やケガが原因の病気のせいで「ふつう」の生活が送れなくなった人たちの話です。でも、その「ふつう」ってなんだろう、とサックス先生は患者さんとの付き合いから問いかけてきますが、この短編でも、「幸せ」ってなんだろう、とフィッツジェラルドがささやいているような…。
心に残った言葉
“She’s always a little disappointed but she makes the best of it, very sweetly too. It’s not an unhappy life as far as we know.” (byピリ―先生)