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英語で学ぼう!◆絵画を歴史から読み解く「大使たち」

こんにちは。スコットです。

コロナ月間では、あらゆる分野について英語で学ぶ特別コースを実施中です。さて、本日は、イギリスが誇る国立美術館、ナショナル・ギャラリー(National Gallery)でのワークショップをお届けしましょう。

「大使たち」(Wikipediaより

ナショナル・ギャラリーのなかでもとくに人気の高い作品のひとつ、ハンス・ホルバイン(Hans Holbein the Younger)の「大使たち」(The Ambassadors)の作品とその歴史的背景の講義を英語で聞きます。

スーザン・フォイスター(ロンドン大学サイトより

解説はスーザン・フォイスター(Susan Foister)さん。ロンドン大学の教授で、美術史(Art history)が専門。ナショナル・ギャラリーではキューレターの仕事もされています。

おっといけない!英語で講義を聴く前に、ここで大切な予習を。このThe Ambassadorsはホルバインの代表作品のひとつ。その大きさはほぼ等身大(207×209.5cm)の肖像画だということ、それも複数(ふたり)の人物の肖像画ということ、この2点は当時の肖像画でも、またホルバイン作品の中でもひじょうに珍しい特徴でから、それだけでもこの肖像画が重要性がわかるかと思います。それを頭に置いておいて、次に人物紹介をいたしましょう。

ハンス・ホルバイン(Wikipediaより

◆ハンス・ホルバイン(1497/98-1543)

ホルバイン一家はルネサンス期に活躍したドイツの画家一家。最も有名なのが息子のハンスで、ハンスは肖像画画家として名声を博し、のちにイギリスのヘンリー八世(Henry VIII)の宮廷画家となります。デューラーと並ぶドイツ・ルネサンス最大の画家のひとり。同じく画家として有名な父や兄と区別するため、ハンスはHans Holbein the Youngerと呼ばれています。

The Ambassadorsはホルバインが30代という円熟期に描かれたものです。

ヘンリー八世(Wikipediaより

◆ヘンリー八世(1491-1547)

イギリス、チューダー王朝第2代のイングランド王。兄の死により1509年に即位すると、政治的理由で兄の妃であったキャサリン(Catherine of Aragon)と結婚しますが、キャサリンとの間に跡継ぎの王子が生まれなかったため、女官だったアン・ブーリン(Anne Boleyn)との結婚を望みます。しかしその離婚はローマ教皇の同意を得られず、王はローマ・カトリックと決裂し宗教革命(国王至上法、イギリス国教会樹立)を断行。生涯のうち6人の女性と結婚しますが、そのうち 2人(アン・ブーリン,キャサリン・ハワード)を処刑する、という怖い王様。

ヘンリー八世はこの絵が描かれた1533年にキャサリンと離婚をして、アンとの結婚を決行しようとしていたのでした。

◆描かれたふたりのモデル

①ジャン・ド・ダントヴィル (Jean de Dinteville)

フランスのポリジー (Polisy) の領主。フランス王フランソア一世(Francis I of France)が信頼を寄せる若き大使(左側の人物)。

②ジョルジュ・ド・セルヴ (Georges de Selve)

フランスのラヴォール(Lavaur)の司教。このときが初めてのイギリス訪問。ダントヴィルの友人。

ふたりの訪問理由は、ヘンリー八世の離婚と再婚問題で浮上した、イギリスとローマ・カトリックの関係をフランソア一世に代わって見極めることでした。なぜなら、フランソアには強力なライバル――スペイン王でありローマ皇帝でもあるカール五世との争いで、ヘンリー八世の助力が必要だったからです。国と国との駆け引き、宗教と宗教の対立のなかで、ホルバインは密命をかかえたふたりの若い大使たちを描いたのです。

それでは、フォイスター先生の講義をお楽しみください!

絵の描かれた時代背景のほかにも、絵画そのものの解説も面白いのでよく聴いてみましょう。ダントヴィルの服装(ピンクのサテン、高価なオオヤマネコ(lynx)の毛皮、帽子とバッヂ)、セルヴの服装(高価なローブ)、ふたりの年齢(短剣、本)、背景(カーテンと絨毯)、上棚と下棚にある品々、目の前にある家畜の骨のようなもの、これらすべては精密なタッチで描かれているだけではなく それぞれが意味を持っていることがフォイスターさんの解説で明らかになっていきます。

ダントヴィルのモットーは「メメントモリ(Memento mori)」だとか。意味は、「いつかは死ぬことを忘れるな”Remember thou shalt die.”」です。それを表す象徴的なものは絵の中に見つかりましたか?

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テーマの著者 Anders Norén