イギリス人作家D.H.ロレンスを研究する日本ロレンス協会が今年50周年を迎えました。おめでとうございます!
来月、慶応大学で行われる学会に先駆けて、今回はロレンスの中篇The Foxをご紹介いたしましょう。
時は、第一次世界大戦が終わろうとしている頃。物語の主人公はふたりの女性、バンフォードとマーチです。
バンフォードの父親が提供した資金で、ふたりは農園の経営を始めます。家事を受け持つ、ひ弱なバンフォードと、力仕事を一手に引き受けるたくましいマーチ。慣れない農園経営に一喜一憂しては、将来に不安を抱えた生活を続けていました。
ある冬の夜、かれらの農場に若い兵士が突然やってきました。ヘンリーと名乗るその青年は、以前この農園に住んでいたことがあるそうです。最初は警戒していたふたりも、丁寧で、明るく、ものやわらかい声で話すヘンリーに気を許し、泊まる部屋を提供します。
バンフォードには、ヘンリーは弟のような存在ですが、マーチにとっては、ヘンリーが納屋のニワトリを襲っていくキツネのように思えて不安になります・・・
ヘンリーは果たして「キツネ」なのでしょうか。誰が「狩って」誰が「狩られる」のか。まるで舞台を観ているような感覚に襲われるこのThe Foxは、今も色あせることなくロレンス研究者だけでなく、世界中のロレンス・ファンに愛されています。